2022/11/17 19:31



オリーブの栽培に携わって7年目。ようやく栽培に少し自信がついてきました。農業は良くも悪くも畑や収穫量で結果が出てしまう職業ですよね。
 
やってきて思うのは、「我を殺すこと」の大切さです。それについて、自分のメモも兼ねて書いておこうと思います。
 
 
「守破離」という言葉だったり、「何かをおぼえるには、変に経験のない人の方が良い」というのは、昔から職人さんの世界などで言われ続けてきたことでもありますよね。
 
たとえば、ぼくはオリーブの栽培支援で島の60代以上の方の畑によく行くのですが、一度園地で一緒に作業して、そのときには「やり方がよくわかった」と口にする方でも、1年後、といわず数ヶ月後に園地を訪れると、一緒に作業したときの方向性はどこかへ消え去り、まったく元に戻ってしまっている、ということがよくあります。
 
他の作物で農業経験のある皆さんは、自分の頭で考え、「ああ言われたけども、こうした方がええんじゃないか」とやり方を変えてしまうんですよね。
 
毎年園地に伺って、毎年同じことを説明するのに、数ヶ月後には教える前の状態に戻ってしまう。こういう方が結構います。こうなるともう、これは性格の作用なんだろうなあと思うのです。
 
そうして島の栽培者さんの園地をまわって気づいたことは、樹の間隔でも施肥でも防除でも、セオリー通り、栽培暦通りにそつなく素直にやっている方の方が結果が出ている、ということでした。つまり、「守破離」の「守」という期間は、やはり思った以上に大事なんだなあ、と。
 
 
さて。自分は、オリーブ栽培の経験がゼロの状態でここに来ました。それどころか、農業の経験すらありませんでしたので、教わったことを素直に続ける以外に道がはなかったわけですが、今にして思えばそれがすごく良かったのだと分かります。
 
「我を殺せ」とは、自分の友人が師匠から言われた言葉です。
 
なんでも、「40代以上になると『我』が出てきてしまう。やり方を教えて上手く出来るようになっても、次の日にはなぜかまったく違うやり方をしていることがよくある。年齢によって積み重ねた知恵があるから、勝手にアレンジを加えてしまう(=我が出てしまう)んだよね」と。
 
ことオリーブ栽培でいえば、日本では小豆島の皆さんが数十年をかけて作り上げてきた栽培のノウハウがあります。それは知識であり技術でもあるわけですが、やはりそうした、積み重ねによって作られたノウハウには、信頼できる重みがあると自分は思っています(そう考えると、自分は結構保守的なタイプなのかもしれません)。
 
特にオリーブは樹で、野菜のように1年で結果が出やすいものでもありません。コロコロとやり方を変えずに、じっくり取り組むこと、習ったやり方やノウハウを信じて「待つ」ことも、ことオリーブの栽培では大事なのだろうと思うこの頃です。
 
 
たしか松山大耕さんの著作にあった言葉だと記憶しているのですが、「型を身につけない人には『型破り』はできない。それは『型なし』だ」というのを自分は心のどこかで大事にしています。
 
島に来たときは30代だった自分も、立派に40代になりました。ますます「クセつよ」になっていく年頃なわけですが苦笑、これまでやってきたことの良かった部分を大切に、これからも我を殺しながら頑張ろうと思う7年目なのであります。